METHOD_VERSALLIA/.

:/ reta xA rre LYAcia_olo
 lYAnca Adoodu ag YAmaen /:
(夜空 月影落ちる大地と満月を繋いで)
xA rre Rhaplanca wAfA za dAz
dn flip LYIredjena/.
(貴方となって 貴方を護りたかった)
xA rre <-x a.u.k. cAzA has
dn Araudl_syalea daf Imoy_dahzel/.
(重ねた苦難の日々を鎧と纏って)

:/ fIrYIl dn YIale /:
(貴方の歌が怖かった)
xA harr jIlUr dn LYIeje ess LYIesyfo_giz/.
(恐怖の奥 弱さの真実を突きつけられて)

:/ qAlAs dn YNeje /:
(貴方の純粋さに震えた)
xA harr vAsYAk a.u.k. Ieje dn mArYIreh/.
(私を映す貴方は 曇り一つ無い鏡面)

xA sorr aYAuk nel so/.
(それ程に 貴方は “無” であったのだ)
:/ YAzz wUfU za rYAfrYAm
 du LYAcia_olo ut yor /:
(無垢な心に灯せなかった月光)
:/ mAnAg du Ukvvia ag Emeryu /:
(果たせなかった後悔も ささやかな想い出も)
:/ tAkYAd ag dArYAsAn tie YAbalduo /:
(届けよう 伝えよう 遠い遠い貴方へと)
:/ hYAmmrA du manac Versallia ut LYAcia_olo /:
(夜空に想いの回廊を拓いて)

xA harr yAzAt fountaina du noes/.
(私は私を満たしたい)
xA sorr wis Amerfa la Aeje_titia
we faiy beng noes,
(一瞬前の私よりも
 恐怖に打ち克てる強い想いで)
ttu tArAm du ouwea skit sos LYIredjena/.
(重ねた約束の先で 貴方が満ちるよう)

xA harr ugi zz wAsArA du LYIredjena/.
(忘れるものかと選んだのだ)
xA harr sii du Emeryu yanje yanje/.
(繋いだ日々を断たせはしない)
xA rre Rhaplanca ag Versallia
wEwjAncA ess Asphaela_merfa/.
(想いの回廊が 私を貴方にする)

メソッド ヴェルサリア

種別 エクストラクト

効能
I.P.D.の特性を利用し、
コスモスフィア内に特殊回路を形成する
詩の想い
下記参照

「METHOD_REPLEKIA/. (レプレキア) が再び謳われるとしたら」 、 「レプレキアの詩の想いの “if的裏話” を考えるなら」 、 「後世の I.P.D. クイーンが、権力争いに利用されてしまったら」

思い付きが投稿企画のお題と繋がった事で、本格的に形になったのが このエクストラクトです。

※ Twitter投稿企画への参加作品に加筆修正

クイーン登録基準に満たないI.P.D.でも、クイーン専用級エクストラクトを実行可能にし、インフェル・ピラを手中に収める事すら叶う詩 ―― 簡単に言ってしまえば、VERSALLIA/. は 『クイーンの権限にタダ乗りする詩』 です。

権限の行使は、I.P.D.の特性を悪用してインフェル・ピラを騙す準備から始まります。

VERSALLIA/. を実行したI.P.D. (以降 『実行個体』) とクイーンの間、コスモスフィアレベル7以降の深部に “個と個を繋ぐ” 特殊回路が形成され、以後は 『実行個体 → 特殊回路 → クイーン → インフェル・ピラ』 というプロセスを経て、実行個体の権限行使 (エクストラクト詠唱) が可能となります。騙しのカラクリとしては、インフェル・ピラに “クイーンによる操作と誤認識させる” 形です。

クイーンはあくまで “インフェル・ピラを騙すための仮面役” であり、ダウンロードした詩の想いからの展開や、詠唱は実行個体が行わなければなりません。また、 METHOD_VERSALLIA/. を介したエクストラクト名は 『METHOD_○○ (エクストラクト名)_delegate.VERSALLIA/.』 と変化します。

効能だけを見ればチートのようなエクストラクトですが、既にクイーンが実行済みのエクストラクトは謳えません。それらと同じ操作を実行したいなら、同等のエクストラクトを新規作成する必要があります。

クイーンを巻き込んだ権力争いの最中に生まれた この詩にかかる手間の全て、詩の設計者の密かな抵抗は、“何としても謳わせたい詩がある者達” にとって、大した事はなかったのだろう……という設定で VERSALLIA/. を構築しました。

< 詩の想い 【女王と村娘】 >

恐怖の女王に支配された国があった。
国中に絶え間なく響くのは、女王の恐怖の歌。
恐怖に侵された人々の悲痛な叫びが聞こえない日など、ひと時も無かった。

そんな国に僅かに残された平穏を生きる、ラプランカという村娘がいた。

国のはずれにある小さな村には、恐怖の歌は強く届かないのだろう。ラプランカは、厳しくも恵みと癒しを与えてくれる自然に感謝しながら、絶え間ない恐怖の歌の中を、村人達と助け合いながら静かに生きてきた。

ある年の村の祝祭で、ラプランカは祭りの歌を謳う役目を担い、それを披露した。
役目を果たし安堵するラプランカと、彼女の歌を褒めてくれる村人達。楽しい祝祭は続き、今年も静かに終わりを迎えるのだと誰もが思っていた。
祝祭の最終日、兵士達が村を取り囲むまでは。

ラプランカは、女王の居城へと連れ去られた。
何故と問う彼女に、城の者達は 『お前の声が女王の声と似ているからだ』 と告げる。彼らは、女王の影武者を務められる者を探していたのだった。

城の奥の塔に閉じ込められたラプランカは、影武者としての教育を施される。
自由に出歩く事を許されない息苦しい日々。故郷を想って泣き、故郷よりもずっと強く響く恐怖の歌に耐える日々。

ラプランカの心が挫けそうになったある日、塔と城を繋ぐ回廊の鍵が開けられた。
女王がラプランカとの面会を望んでいるという。

回廊は女王の間がある場所へと続いていた。
部屋の扉の向こうから、ラプランカによく似た声が呼んでいる。

あんなに恐ろしい歌を謳うのだ、きっと女王は恐ろしい姿をしているのだろう……
怯えながら扉を開けたラプランカは、女王の姿を目にして驚いた。己と年の変わらぬ少女が、無垢な笑顔でラプランカを待っていたのだから。

女王はラプランカを招くやいなや、城の外の話をして欲しいと無邪気にねだる。一度も城の外に出た事の無い女王は、国の、世界の何も知らなかった。ラプランカの目に映り、手に触れるのは、ただのひとりの純粋な少女。

女王の為に短い面会の時間を目一杯使って、ラプランカは故郷の山々の話をする。次の日は川の話をすると約束をし、最初の面会は終わった。

明日は、花と土の話をしよう。
明日は、朝と空気の話をしよう。
明日は、昼と太陽の話をしよう。

次は何を話そう、次は何を聞こう ――
いつしか、ラプランカは回廊を通るのが楽しみになっていた。女王も回廊に響くラプランカの足音を心待ちにしている。重ねられ、果たされる約束は、友情となって二人を繋いでいた。

女王と触れ合ううち、ラプランカにも聞きたい事が次々と生まれていく。

無垢な女王が、恐怖の歌を謳うのは何故か。
恐怖を知らぬ女王が、恐怖を歌えるのは何故か。
女王の名前を教えて欲しい。
友として女王の名を呼びたいから。

友情が明日も続くと信じ、ラプランカは回廊を渡る。明日は、夜空と月の話をしよう。明後日は、女王がラプランカに教える番だと約束をして。

だが、望んでいた明日が訪れる事は無かった。

夜。
一人の若者が、恐怖の女王を討つべく城に侵入した。城の者は次々と倒され、彼はついに女王の領域へと足を踏み入れる。

ラプランカは、今こそ影武者の出番なのだと塔を飛び出し、回廊を駆ける。苦しくて仕方なかった日々も、友を生かす為に必要だったのだと。

女王の間に駆けつけたラプランカは、女王に逃げるよう促した。生き延びて外の世界を知り、恐怖なき歌を謳って欲しいと。

女王は首を横に振った。
ラプランカを影武者として死なせるわけにはいかない。身代わりなど辞めて、この混乱に乗じて故郷へ帰るのだと。

ならば一緒に逃げようと手を引くラプランカに、女王は歌を囁き謳う。それは、幾度となく人々を苦しめた恐怖の歌だった。

頭を掻き乱され、体が言う事を聞かなくなる。離したくないのに、女王の手を、友の手を離してしまう。離れたくないのに、女王の間から飛び出して、扉を閉ざしてしまう。

扉が閉ざされた瞬間、ラプランカによく似た声が向こう側から届いた。

『私の名はヴェルサリア』
『この名を語り継ぐも、忘れ去るも』
『すべては、貴方の心のままに』

ラプランカは、気づけば塔の自室に伏していた。城外へ向かう兵士達の声と足音が騒がしく、朦朧とする意識を覚ましていく。

身を起こし、僅かな希望に賭けて女王を探すラプランカ。静まり返った混乱の跡を辿れば、空っぽになった女王の間で足が止まる。
そこには一滴の血さえも見当たらないが、女王の姿も見当たらない。

ふと、静けさだけで満たされた空間に女王の歌が聞こえたような気がした。

どこか遠くから流れ込んだ気配に、ラプランカの足が再び動き出す。今の城には、ラプランカを止める者など一人も残っていなかった。
歌声の主を探し、外へ、外へと。

城門を潜り、城下町を抜け、山を臨む草原に辿り着く。頭上に広がる夜空では、頂点に満月が輝いていた。

月明かりの下、ラプランカは想い、願い、祈る。
女王が外の世界に出られたのだとしたら、この満月を目に映せただろうか。果たせなかった約束を、誰かが果たしてくれただろうか。

「満月よ」
「どうか、あなたの光のように優しい歌を」
「友ヴェルサリアにもたらしたまえ」

丸い宝石のような満月の輪郭が、ラプランカの涙で滲んだ。

⇒ Gallary