電車から降りて暗い駅のホームに出ると、そこは驚くほど小さく、寂れた無人駅だった。頼りない電灯がかえって暗さを際立たせ、空気は異様に生暖かい……
<共鳴判定:強度1/上昇1>
∞共鳴感情:[ 恐怖(情念)]
感情マッチング『真人 ダイス × 2』
しかし、真人の幼い好奇心の前に不気味など無意味・・・っ!
真人に心酔する順平の前でも可哀相なほどに無意味・・・っ!
順平はスマートフォンを取り出し、すぐに画面の異様に気がつくだろう。
時刻の数字は謎の記号に置き換わり、電波のマークはモザイクと化して蠢いている。アプリ名も殆どが文字化けしており、アイコンの図柄から辛うじて元が分かる有様だ。
祈るような気持ちで操作すると、文明の利器が暗中に光を灯す。
すると、ちょうど光が当たった場所に先客の姿が浮かびあがった。
駅名看板に携帯電話の光をあてて眺めている、一人の女性。
怪異の仕業だろうか。真人がはしゃいでいても気付かなかったようだ。
ふたりが目覚めて話せるようになった事が嬉しいのだろう。
女性は表情を安堵に和らげ、再び駅名看板を照らす。
<女性を調べる>
推奨技能
『*調査』『*知覚』
さり気なく観察を始めた真人の視線は、一際明るい手元に向かった。
注視すれば、真人には馴染みの薄い二つ折りの機械がそこにある。
フィーチャーフォン ―― 所謂ガラケーだ。
着眼点と問い掛けが良かったのか、思いがけず情報が得られた。
この怪異の影響下では、電話とメールが機能しないらしい。
外部との通信を諦めるか否かが真人の脳裏を過った時……まるで奇跡を語るかのように、女性の声のトーンが明るくなった。
女性から巨大匿名掲示板の表示された画面を見せられる。
確かにインターネットは問題なく繋がるようだが、真人が知るガラケーよりもずっと小さく荒い画面が見辛くて仕方がない……女性はかなり年季の入った古い型の物を使用しているのだと気付くだろう。
真人が女性と話す一方で、順平は【きさらぎ駅】について記憶を探る。
<きさらぎ駅の情報>
推奨技能
『*調査』『*知識』
そして、それがどのようなモノであったのか思い出す事に成功する。
「きさらぎ駅は、存在しない駅なんだ」
2004年頃、インターネット掲示板を賑わせた実況があった。
『きさらぎという駅に迷い込んだ』という人物による怪奇体験の実況だ。
不穏な状況の中で途絶えた書き込みを最後に、消息を絶ったその人物が残した数々の騒動を発端とした都市伝説 ――【きさらぎ駅の都市伝説】は、時を経た今も尚まことしやかに語り継がれている……
……と、順平の友人が語っていた。存在する記憶に間違いはない。