Scene :: 1 - 3

動画のコメント欄の様子はこうだ。

「風景は怖いけど、さっきの女の子は可愛かった」
「何分何秒あたり? 最初から見てたけど、誰も映ってなかったぞ」
「どうせホラー映画の宣伝だって」

真人が見える、見えない、動画を疑う……
三つの意見に分かれながら、それぞれの意見の持ち主が同意を求めて実況配信を拡散させていく。

順平 (そろそろいいですか、と目で訴える)
真人 (両腕で丸を作るジェスチャーをする)
順平 ああ……緊張した……
こんな状況だから、余計に……
真人 初実況配信お疲れさま!
休憩も兼ねて、次の実況までは少し時間を置こうね。
真人 きっと、考察やら何やらで勝手に盛り上がってくれるよ。

真人の目論み通り、配信後から徐々に通知が騒がしくなっていく。

「セーラー服の女子がいた!」
「女の子が見えるって言ってる奴らなんなの……怖……」
「見える人と見えない人がいる……ってコト!?」
「変な動画が撮れたって、マジできさらぎ駅なんじゃないの」

まだ限定的な賑わいではあるが、次の情報発信が成功すれば、更なる拡散と信用を得られるだろう。

女性 動画の効果は凄いですね!
ちょっとずつですが、信じてくれる人が増えてきていますよ。
真人 お姉さんはうまくいってる?
女性 冷たいレスがほとんどで、お二人ほどでは……
わたしも写メのひとつでもうpれ、ば ――
真人 どうしたの? おーい、おねーさーん?
女性 見間違いじゃない……電車が……っ!

誰かが気付くのを待っていたと言わんばかりに、ガタンと重い音がする。
慌てた様子で、女性はホームの線路側を指差した。

女性 電車が動いています!!

示された先 ―― 順平と真人の目に映るのは、スピードを上げて闇の中に吸い込まれていく電車の姿。運転士も車掌もなしに、まるで電車そのものが意思を持って走り去ったかのようであった……

女性 …………
女性 置いていかれちゃいましたね……
順平 乗っていても碌な目に遭わなかったと思いますよ。
かといって、ずっとここに居るわけにもいかないだろうし。
真人 だよね。
ホーム以外の場所とか、きさらぎ駅の情報をもっと知りたいな。
順平 他の場所、ですか。
確かに、投稿者が消息を絶ったのは駅とは聞いていませんから……
反応の確認ついでに調べてみましょうか。
順平 (検索サイトは妨害が多かったからなあ……)
(優先するのは、配信のコメントログとリプライだ)

Dice roll

<きさらぎ駅の情報>

技能提案 → 順平『電脳』

順平
電脳 Lv.2
D10 → 6(成功)
D10 → 7(成功)

成功数:2 ダブル/効果的成功
順平
電脳 Lv.2:D10 → 6(成功)/ D10 → 7(成功)

成功数:2 ダブル/効果的成功

配信のコメントログは『真人が見えたか否か』の議論ばかりだ。
めぼしい情報は無いが、動画の目的が拡散なのだから仕方がないだろう。
一方、リプライには諸々の意見と心配の声の他に、有益な情報が集まるようになっていた。

当時を知る者が呟く。
「はすみみたいに線路歩きながら実況してほしい」
「線路沿いを歩いてトンネルを見つけたって書いてあったよね」

オカルト好きが呟く。
「まとめサイト情報ですが、トンネルの先で人に会えたそうです」
「書き込んでたはすみさんって、今も行方不明なんだっけ」

主に集まっているのは、投稿者がきさらぎ駅を離れてからの行動だった。
『線路沿いを歩く』と『トンネルがある』という内容のリプライが多数を占めている。度々出て来る【はすみ】なる名称は、投稿者が使用した掲示板上の名前のようだ。

順平 現時点で集まっている情報をまとめると ――
『線路沿いに歩いていくとトンネルがある』
『トンネルの先で人に会える可能性がある』
『行方不明になった投稿者の名前は【はすみ】さん』です。
女性 トンネルの事がたくさん書かれていますが、重要な場所なのでしょうか。
真人 んー……みんなトンネル推しだね……
真人 なら、私達もトンネル推しで探しに行こう!
順平 安全な道のりとはいきませんよ、きっと。
真人 なーに弱気言ってるの。私と順平がいるんだから問題ないでしょ!
順平 真人さんと、僕……?
真人 頼りにしてるのは、君のスマホだけじゃないって事。
女性 ……えっと?
真人 私達、こう見えて危険な事には慣れてるんだ。
順平 (今の僕には澱月がいる。真人さんがくれた戦う力がある)
(弱腰になって、お姉さんを不安にさせちゃいけない……!)
順平 危険には僕らが対処しますので。
お姉さん、なるべく僕らから離れないようにしてください。
真人 うんうん。目の届く所に居て ―― ね?
女性 お二人とも……ご心配、ありがとうございます。
トンネル、絶対に見つけましょうね!

斯くして、“三人” は線路に降り立ち闇の中を歩き始める。

トンネルを抜けると中つ国もとのせかいだった……であればよいのだが。
根の国に通ずる事なかれと共鳴者に繋がる電子の命綱は、果たして ――

Scene :: 1 - END

∞共鳴 現在値

 順平:1
 真人:1

ネット実況信用値【3】

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