Scene :: 3 - 2

二度目の実況が、画像と共に告知された。

バラストを踏む不規則な音が、トンネルの入り口に吸い込まれる。
ゆっくりと上に向けられたカメラが、掠れたプレートをじっと見据える。
一度目の配信と同じく静かな動画は、再び電脳空間に騒がしさを作り出せるのだろうか。

Dice roll

<ネット実況信用値判定>

推奨技能

『*交渉』『*幸運』
『電脳』『業界:インターネット』
『*交渉』『*幸運』『電脳』『業界:インターネット』

順平
電脳 Lv.2
D10 → 5(成功)
D10 → 6(成功)

老人の撮影成功ボーナス
「ダイスボーナス+2」
(※ボーナス未使用)
(※後の判定で順平のみ使用可能)

成功数:2 ダブル効果的成功

ネット実況信用値:7(+2)
順平
電脳 Lv.2:D10 → 5(成功)/ D10 → 6(成功)
老人の撮影成功ボーナス「ダイスボーナス+2」
※ボーナス未使用(後の判定で順平のみ使用可能とする)

成功数:2 ダブル/効果的成功

ネット実況信用値:7(+2)

名前を読もうと試みる者がいた。記憶や記録を探る者がいた。
疑いの目も声も、再びのきさらぎ駅を信じる者達の渦に消えていく。

「オカルトブログ見てきた。伊佐貫トンネルだって」
「伊佐貫トンネルで合ってる。読みは『いさぬき』な」
「そこも実在しない場所だったはずだけど……大丈夫?」

葉純が呼んだ名は、正しかった。
人々が順平の実況を元に勝手に考察を始め、様々な意見やアドバイスがこれまで以上の速度で流れ込んでくる。古き都市伝説の新たな展開に、新情報を、新展開を求める群衆の欲望が――

Dice roll

<共鳴判定:強度7/上昇1>

∞共鳴感情:[ 自己顕示(欲望)]
感情マッチング『真人 ダイス +1』

順平
D10 → 8(失敗)

真人
D10 → 8(失敗)
D10 → 9(失敗)
D10 → 2(成功)
D10 → 5(成功)

真人 成功数:2
∞共鳴レベル「1上昇」
順平:D10 → 8(失敗)
真人:D10 → 8(失敗)/ D10 → 9(失敗)
D10 → 2(成功)/ D10 → 5(成功)

真人 成功数:2 → ∞共鳴レベル「1上昇」

配信で過熱するインターネット空間とは反対に、真人は悪寒に似た冷たさを感じる。今、この場所――怪異から滲み出し放たれる冷気。それを形容すべき言葉は、瘴気に他ならない。

真人 (……本性曝け出してきたみたいだけど、回りくどいよ)
(いちいちネットで騒がれないと、自己主張もできないわけ?)
真人 (――あ)
真人 (こいつ……『ネットに群がる人間の熱狂』を喰ってる……?)
(それも、きさらぎ駅の都市伝説に向けられる熱狂おそれを)
真人 (だとしたら、魂の輪郭の曖昧さも、ぼやけた風景も)
(何より、『消えたくない』と足掻く思念にも説明がつく)
(都市伝説が時間に埋もれて、力を失いかけているんだ)
真人 (だから、私達を利用して存在を取り戻そうとしている)
(そうでしょ?)
真人 (人間が都市伝説から産み落とした怪異 ――【きさらぎ駅】!)

シナリオ独自パラメータ
このシナリオには、独自のパラメータが存在する

<ネット実況信用値>

・共鳴者が異界での体験をインターネット実況する判定に成功するたびに、成功数が加算されていく
・共鳴者たちの実況がどの程度ネット上の人々に信用されたり注目されているかを示す
・この数値が高まれば高まるほどネットを介して有益な情報が得られる
・しかし、同時に【怪異:きさらぎ駅】に力を与えることにもなり、存在強度が高まっていく
・【怪異:きさらぎ駅】の共鳴判定の強度は、ネット実況信用値の現在値と同じ値になる

真人 (さて、怪異の正体と目的が分かったのはいいけど)
(順平にはいつ教えてあげよっかなー)
真人 (葉純が側にいる限り、監視は楽でも情報共有は難しい)
(きさらぎ駅に、葉純に、気付かれずに共有するには――)
順平 あの……真人さん、葉純さん!
真人 なーに? もしかして、もう情報揃っちゃった?
順平 そうなんです、反応が凄い勢いで……見てください!
順平 伊佐貫トンネル ―― 漢字も読み方も、葉純さんの言う通りでした。
そして、やはりというか……架空の場所です。
葉純 ですよね! ほら、もう一度プレートを見てみませんか?
ちゃんと『伊佐貫』って書いてありますから!

葉純は順平と真人に再びプレートを見るよう促す。
彼女の指が嬉しそうに指し示した、頭上のプレートには ――

Dice roll

<プレートを再確認する>

推奨技能
『*知覚』

順平
*知覚
D10 → 3(成功)
真人
*知覚
D10 → 7(失敗)
順平 *知覚:D10 → 3(成功)
真人 *知覚:D10 → 7(失敗)

順平だけに、はっきりと『伊佐貫』の文字が見えた。



つい先程まで、文字の痕跡としか認識できなかったというのに……
一方、真人の見るプレートは依然として掠れたままだ。

順平 ……あ、あれ……? 文字が、僕にも見えてる!?
真人 えっ? 掠れたままじゃない?
順平 嘘じゃないのは、真人さんなら判りますよね。
真人 嘘のない代謝とうぜんだよ。
順平が見てるのは、間違いなく現実で本物。
順平 僕達にも認識の齟齬が出て来るなんて……
ぼやけた景色と関係があるんでしょうか。
真人 うん。あるはずだよ――絶対にね。

Dice roll

<共鳴判定:強度7/上昇1>

∞共鳴感情:[ 恐怖(情念)]
感情マッチング『真人 ダイス× 2』

順平
D10 → 5(成功)

真人
D10 → 5(成功)
D10 → 5(成功)
D10 → 10(エラー・ダイス)
D10 → 3(成功)
D10 → 10(エラー・ダイス)
D10 → 10(エラー・ダイス)
エラー・ダイスにより「成功数-3」

順平 成功数:1
∞共鳴レベル「1上昇」
真人 成功数:0
∞共鳴レベル「変化なし」
順平:D10 → 5(成功)
真人:D10 → 5(成功)/ D10 → 5(成功)
D10 → 10(エラー・ダイス)/ D10 → 3(成功)
D10 → 10(エラー・ダイス)/ D10 → 10(エラー・ダイス)
エラー・ダイスにより「成功数-3」

順平 成功数:1 → ∞共鳴レベル「1上昇」
真人 成功数:0 → ∞共鳴レベル「変化なし」

霞む風景の中で際立つ【伊佐貫トンネル】の七文字に、ふと、順平は恐怖を覚える。トンネルの名が “たった今書き足されたように” 不自然なほど鮮明で美しく ―― そして、酷く不気味だと。

順平 (わざと文字を消して混乱を誘った? 違う……!)
(14年前のトンネルの姿に戻った? 違う……!)
(まるで、古い物に新品を無理矢理張り付けたような違和感――)
順平 (僕達、都市伝説をなぞったままでいいのかな……)
(このままトンネルを進んだら……)
真人 順平。
真人 手を繋いでおけば、怖くない。
順平 ……真人さん……
真人 行こう、トンネルの向こう側。
言ったでしょ、私と順平がいるんだから問題ないって。
葉純 ネットの人たちがくれた応援の力もあるじゃないですか。
このトンネルを抜ければ、人がいる場所に出られるんです。
親切な人に会える、現実に戻れる……そう信じて進みましょう!
順平 葉純さんも……
ありがとうございます。気合、入れ直しますね!

トンネルの暗闇がスマートフォンのライトで切り裂かれ、コンクリート壁の薄鈍色が浮かび上がる。古いガラケーの画面も、儚いながらも灯火を添えた。
つま先でバラストを転がし、踵でレールを鳴らし、共鳴者達の次なる一歩が反響する。

真人 あ、葉純さんも手繋ぐ? 怖くない?
葉純 いえいえ、お気遣いなく。
爆発しろと言っても、カップルに割り込む趣味はありませんので!
順平 !?
真人 変な代謝はんのう……順平、私と手繋ぐの嫌になっちゃった?
順平 嫌じゃないです!
順平 あと……葉純さん……
葉純さんが想像する意味でのカップルじゃないですからね、僕達……

怪異の正体と目的を見抜きながらも、真人は葉純達と無邪気に会話を弾ませ続ける。笑顔の裏側で、怪異【きさらぎ駅】を斃さんと、思い付きひらめきを策の枠に収めながら。

“その瞬間” まで本能と思考を織り上げて欺き通すのだ。
きさらぎ駅が、共鳴者達を意のままに操るべく欺いてきたように。

真人 (――よくよく考えなくてもさ)
(情報共有なんて面倒、いらなかったんだよ)
真人 (きさらぎ駅が力を取り戻して、葉純が怪異らしく襲ってきたら?)
(順平も対処せざるを得ないし、否が応でも正体に気付くよね)
(口火が切られたら、後は好きに暴れるだけ)
(ネットの熱狂……逆手にとれば、こっちのモノ)
真人 (お望み通り――力、取り戻させてあげる!)

響き、探り、操り、欺き――
共鳴者達の脱出劇は、存在への執着に乗ってついに終着駅の目前に迫る。

電脳世界が手招いた、その駅の名は未だ無く。
行き先を告げるアナウンスは聞こえない。
軌条の分岐を見定めるのは、己の目の他にない。
終着の地に降り立つのは、己の足の他にない。

終わりの形に名を与え、その先を未来と呼ぶのなら、己の命で生き残るしかない。

Scene :: 3 - END

∞共鳴 現在値

 順平:2
 真人:4

ネット実況信用値【7】

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